ここでは、障害年金の「対象傷病と対象外傷病」「傷病毎の注意点」「申請の書類」「診断書の注意点」についてご説明いたします。
障害年金の対象傷病
障害年金の対象傷病は、肢体の障害だけでなく、 うつ病、知的障害・発達障害、 人工透析(慢性腎不全)、 心臓ペースメーカー(難治性不整脈)、 がん、脳梗塞、人工肛門、人工関節なども含まれます。
- 障害年金の対象となる主な傷病名を記述すると、次のようになります。
- 障害年金の対象外の傷病には、
次のものがあります。
障害年金の傷病毎の注意点
いずれの傷病であっても、基本的には傷病によるその障害が、 日常生活の制限がどの程度生じているかで 障害2級が、 労働の制限がどの程度生じているかで 障害3級が、認定されます。
- うつ病(精神疾患)の場合
- 障害年金の受給者で、精神障害の方の割合は30%強と非常に多いです。
その中でも、特に多いのがうつ病です。
- うつ病でも、普通に就労中の場合は障害認定されるのは難しいですが、
病気のためにお仕事が変わったり、勤務日数が少ない場合などは 障害3級に認定されることがあります。
- うつ病の場合は、客観的な検査数値で障害の程度を判断できないこともあり、
主治医が作成した診断書が評価に一番大きく影響します。
- 詳細に知りたい場合は、次を参照いただければと思います。
うつ病 と 障害年金 SOS
- 知的障害・発達障害の場合
- 障害年金の受給者で、知的障害 の方の割合は23%と非常に多いです。
また発達障害で受給される方も多いです。
- 知的障害の場合は、知能指数と、
日常生活での援助の必要程度で総合的に判定されることになります。
- 知的障害で年金を申請する場合は、初診日が「0歳」の扱いとなります。
- 発達障害は、知能指数が高くても、
社会行動やコミュニケーション能力の障害により、対人関係や意思疎通
が円滑に行えない場合は、障害等級に認定されることがあります。
- 発達障害の初診日は「0歳」ではなく、初めて医師の診察を受けた日となります。
- 詳細に知りたい場合は、次を参照いただければと思います。
知的障害・発達障害 と 障害年金 SOS
- 人工透析(腎疾患)の場合
- 障害年金の認定基準には
「人工透析療法施工中のものは、
障害の程度を原則2級とする」と記載されているため、
人工透析を行なっている方は障害状態の程度を満たします。
- しかし、障害年金を受給するためには、 初診日を証明しなければなりません。
- 人工透析療法の場合は、「糖尿病性腎症」「糸球体腎炎」「腎硬化症」と診断された日が
初診日となることがあり、初診日を証明するため、
いろいろな資料を揃えなければならないことがあります。
- 詳細に知りたい場合は、次を参照いただければと思います。
「人工透析 と 障害年金 SOS
- 心臓ペースメーカーの場合
- 障害年金の認定基準には「ペースメーカー、
ICD(植込み型除細動器)を装着したものは、
障害の程度を原則3級とする」と記載されているため、
難治性不整脈でペースメーカーを装着された方は障害状態の程度を満たします。
- 弁疾患により人工弁を装着された方も、
障害の程度が原則3級となります。
- 「3級」の場合は障害厚生年金が支給されますが、
障害基礎年金は支給されません。
- 心臓ペースメーカー、ICD、人工弁を装着した場合の障害認定日は、
それらを装着した日となります。
- 詳細に知りたい場合は、次を参照いただければと思います。
「心臓ペースメーカー と 障害年金 SOS
- がん(癌)の場合
- がんなどの悪性新生物で
障害年金を受給している者の割合は1%強と非常に少ないです。
- これは「がん」により障害年金が受給できることが、
一般的に知られていないことからきているものと思われます。
- 「がん」によりお仕事や日常生活が制限される場合も、
障害年金を申請することができます。
- 「がん」による抗がん剤治療や放射線治療を受け、しびれや痛み、貧血や嘔吐、
倦怠感などの副作用が重度の場合も障害年金が受給できることがあります。
- 詳細に知りたい場合は、次を参照いただければと思います。
「がん (胃・大腸・肺・肝・子宮・乳がん) と 障害年金 SOS
- 人工肛門、新膀胱、尿路変更術の場合
- 人工肛門、新膀胱、 尿路変更術を施した者は、 原則3級となります。
- 人工肛門を造設し、新膀胱を造設した者、または尿路変更術を施した者は、
原則2級となります。
- 人工肛門、尿路変更術を施した場合の障害認定日は、
施術日から6月経過した日となり、新膀胱を造設した場合は造設した日
となります。
- 人工関節、人工骨頭の場合
- 上肢の3大関節(肩・肘・手)に 人工関節または人工骨頭 をそう入置換した者は、障害の程度が原則3級となります。
- 下肢の3大関節(股・膝・足)に人工関節または
人工骨頭をそう入置換した者も、障害の程度が原則3級となります。
- ただし、そう入置換してもなお、肢体の用を全く廃したものは、
さらに上位等級に認定されます。
- 人工関節、人工骨頭をそう入置換された場合の障害認定日は、
そう入置換した日となります。
- 脳梗塞、脳出血の場合
- 脳梗塞、脳出血などの
脳血管疾患で障害年金を受給している者の割合は、8%強と多いです。
- 脳梗塞の代表的な後遺症が、身体の片方だけが麻痺する片麻痺です。
この場合の障害認定基準は、肢体の障害が適用されます。
- 肢体の障害の障害認定基準は、「上肢の障害」「下肢の障害」
「体幹・脊柱の機能の障害」「肢体の機能の障害」に分かれており、
それぞれの障害に該当した認定基準で認定されます。
- 重篤な場合で、肢体の障害に加え、言語障害、記憶障害、視野障害などが重なると、
障害1級に認定される可能性もあります。
- てんかんの場合
- てんかんは、抗てんかん薬の服用により、
発作が抑えられている場合は認定が難しいようです。
- 発作が抑えられない難治性のてんかんと、発作は抑えられていても、
精神神経症状および認知障害が出現する場合は、
日常生活動作がどの程度損なわれているかにより認定されます。
- 糖尿病の場合
- 糖尿病によりインスリン治療を行ない、
血糖値がコントロールされている場合は、障害認定は難しいですが、 コントロール不良の場合は 障害3級となります。
- 糖尿病の障害認定基準は「代謝疾患による障害」が適用されますが、
糖尿病性の合併症は、「合併症での障害認定基準」
により総合的に判定されることになっています。
- ひきこもりの場合
- 40歳~64歳の中高年世代における「ひきこもり」は、
全国に60万人強と大変多いです。
- しかし「ひきこもり」は病名でないため、単に「ひきこもり」というだけでは、
障害年金の受給は不可能です。
- 「ひきこもり」の方の95%が何らかの精神疾患を患っているとの調査結果もあり、 統合失調症、うつ病、 発達障害の病名が付く方が多いです。
- 「ひきこもり」でも一定の病名が付き、日常生活やお仕事が制限されている場合は、
障害年金の受給が可能となります。
- 詳細に知りたい場合は、次を参照いただければと思います。
ひきこもり と 障害年金 SOS
- 視力視野障害(眼の障害)の場合
- 令和4年に障害年金の「眼の障害」の認定基準が改正され、
従来よりも視力視野障害での障害年金が認定されやすくなりました。
- 視野検査の認定基準は、これまでのゴールドマン型視野計の認定基準に加え、
自動視野計の認定基準が創設されました。
- 視力視野障害(眼の障害)の認定基準では、
診断書の検査結果が一番重要視されます。
- 詳細に知りたい場合は、次を参照いただければと思います。
視力視野障害(眼の障害) と 障害年金 SOS
- 難病の場合
- 一般的に難病による障害年金の認定は難しい面があると言われています。
- 診断書の「自覚症状」欄には悪く書かれるのですが、
主治医の「他覚所見」欄には軽く書かれてしまい、
想定外の認定結果となることが多いです。
- 主治医に患者の悪さを理解してもらう等など、患者さまと主治医の信頼関係が重要になります。
- 詳細に知りたい場合は、次を参照いただければと思います。
難病 と 障害年金 SOS
障害年金の申請に必要な書類
障害年金の請求に必要となる主な書類として、
「診断書」
「病歴・就労状況等申立書」
「受診状況等証明書」
「障害年金裁定請求書」があります。
- 診断書について
- 診断書は、
傷病名でなく障害の内容により8種類に分かれており、
障害状態が的確に記載できる診断書様式を選定することになります。
- 複数の障害がある場合は、複数の診断書を作成する場合もあります。
- 例えば、脳梗塞で肢体の障害に加え、精神の障害が併存する場合は、
「肢体の障害用」と「精神の障害用」の二つの診断書を書くことになります。
- 障害認定日(初診日から1年6月) から1年以上経ってから、障害認定日に遡り障害年金を申請する場合は、 障害認定日直後の障害状態が記載された診断書と 申請日直前の診断書が必要となります。
- 病歴・就労状況等申立書について
- 病歴・就労状況等申立書は、
発病から初診日までの経過や、初診日から現在までの病院ごとの
「受診状況」、及び障害認定日と現在の「就労状況、日常生活の状況」を
ご本人が記入することになります。
- 受診状況には、期間ごとの症状と、日常生活の支障、就労上の支障、
家族の援助の必要性など、審査する人が状況をイメージできるよう、
具体的に記述します。
- 受診状況等証明書について
- 障害年金等の申請を行うとき、その障害の原因又は誘因となった傷病で
初めて受診した病院の初診日を明らかにすることが必要です。
そのために使用するのが受診状況等証明書です。
- 通常は、申請者の記憶による初診日認定は行なわれません。
- 当相談室に障害年金の申請を委託された場合は、当相談室で、 受診状況等証明書の作成依頼書を書きますので、
初診時の病院にお渡しいただきます。
- なお、初診時の病院と診断書を作成する病院が同じ場合は、
この証明書は省略できます。
- 初診時の病院が廃業等で、受診状況等証明書を作成してもらえない場合は、
「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成することになります。
- また、第三者に「初診日に関する第三者からの申立書」を記入してもらい、
初診日証明とすることも可能となりました。
- 障害年金裁定請求書について
- 障害年金を申請する上での基本事項を記入するのが 障害年金裁定請求書です。
- 障害年金裁定請求書には、基礎年金番号、配偶者、子のデータ、
年金加入履歴、障害の原因が第三者行為か否かなどを記入します。
- 障害年金の申請は、障害年金裁定請求書に診断書などを添付して、
年金事務所に提出します。
- その他の書類
その他の書類として、次のものが必要となることがあります。
- 戸籍謄本
- 住民票
- 年金手帳(基礎年金番号通知書)の写し
- 年金証書の写し(年金を受給している方のみ)
- 普通預金通帳または郵便貯金通帳の写し
- 身体障害者手帳の写し(持っている方のみ)
- 所得証明書(配偶者の加算がある場合や20歳前の傷病の場合)
- 委任状(代理人が障害年金を申請する場合)
診断書を依頼するときの注意点
障害認定を受ける上で最も重要視されるのが 診断書です。
- 診断書には、病歴・治療経過、臨床所見、各種検査データに加え、
日常生活の活動能力、労働能力などの、障害者本人でなければ把握できないことを
主治医が記入することになります。
- 診断書の「病歴・治療経過、臨床所見」は、簡潔に記載されていると
病状が軽いものと思われる場合があります。
「日常生活の活動能力、労働能力」は、
具体的に詳しく記入してもらう方がよいです。
- このため、主治医に診断書を依頼する際は、お仕事や日常生活の苦しみ、傷病による不便さ、
援助の必要性を充分に伝えることが重要となります。
- 主治医は短い診察時間内に、病気で困っている方の日常生活について
詳しくヒアリングしている余裕がないことがあり、患者さまは、日常生活の実態をすべて主治医に 伝える術を持ち合わせていないことが多いです。
- また、一般的に、医師は疾病に関しては専門家ですが、
障害年金の診断書や障害認定基準を理解し、
診断書の記入に慣れている者は少ないと思われます。
- 医師によっては診断書に、患者の日常生活の能力や困難さを、 見た目や印象で記入されることもあります。
- 当相談室に障害年金の申請を委託された場合は、当相談室では、
あなたのお仕事や日常生活の実態について独自の調査を行ない、
医師への診断書の作成依頼書と 診断書記載の参考資料を作成します。
- 主治医への診断書の依頼は、基本的にはご自身が行うことになりますが、それが困難な場合は、
普段から生活状態を把握しているご家族などに同行してもらうといいです。
病歴・就労状況等申立書の注意点
病歴・就労状況等申立書も、
障害認定を受ける上で重要なものとなります。
この申立書の記述に際しては、重要部分が抜け落ちないような注意が必要です。
- 申立書には、診断書では伝えきれない内容を、
審査する人に理解してもらえるよう記述することが重要です。
- 特に就労状況については、
通常の作業が困難なため、「月20日で1日8時間の簡単な組立作業」
または「月20日で1日4時間の組立作業」と正しく記載すれは、
認定されたかもしれない人が、ただ単に、
「月20日の組立作業」と記入しただけでは、通常に就労できているから
障害に該当しないと判断される場合があります。
- また、就労に関し関係者の支援状況などを、
丁寧に記述することも重要となります。
- 申立書の書き方により、障害の認定が受けられないこともあります。
加えて、申立書は診断書に記入された内容と矛盾しないようにしなければなりません。
- 当相談室に障害年金の申請を委託された場合は、当相談室では、
皆さまからお仕事や日常生活の状況をヒアリングし、
誠実に病歴・就労状況等申立書を仕上げるお手伝いをします。
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